この画像が完成段階です。今回も果てしなく勉強になった。そしていつもこの「1P模写」やると実感する……
尊敬
今回のお手本は?
望月三起也先生の『ワイルド7』です。名作中の名作ですね。どんな話かというと↓
『地獄からきた警察』の異名をとるワイルド7は、悪人を処刑する権限を許された超法規的機関である。そのメンバー7人はいずれも凶悪な前科の持ち主だが、正義の組織として活躍している今、彼らの結束は固い。
長編の『ワイルド7』その中でも特に人気の高いシリーズ「地獄の神話」から1シーンをお手本に選びました。
リーダーの飛葉が入院している病院に、敵対する組織に雇われた殺し屋「シカゴの五本指」のひとりが襲撃をかけピンチに陥るもベランダに置いてあった愛機のバイクで反撃する最高のシーンです。
あらすじを説明しただけで、ど派手アクションシーンが連発なのがわかる。カッコいいシーンが多すぎてお手本を選ぶのに苦労した。
前回も前々回もそうだが、この「1P模写」のお手本シーン選ぶのに読み直すと演出やコマ割りなど普段気づかないレベルまで気づくことができる。これが本当に大きい。深く作品を読み込んでいる感覚になる。
模写をすることよりも発見することの方がはるかに大きな学びになった。いや、模写する意気込みで読むからこそ発見できているのかもしれない。
自分で気づくことが何より学びになるんだ。
『ワイルド7』からの学び
まずは『ワイルド7』の魅力をあげてみる。たくさんありすぎて長くなるかもしれない。
- キャラクターがカッコいい
- メカ(バイク、車、ヘリ、武器)のクオリティが高い
- 俯瞰や空撮が多いから状況がわかりやすい
- アクションシーンがど派手でかっこよすぎる
- 演出もいろんな種類のテクニックを使っている(ワタシが気づけなかったものもあるはず)
- セリフも抜群にイカしてる
キャラクターがカッコいい
これは説明不要でしょう。『ワイルド7』のメンバー全員魅力的スギィ!特にリーダーの飛葉。マジでかっこいい。サングラスのマンガキャラで歴代最高なんじゃないだろうか。他のメンバーもキャラが濃いのが揃ってる。ヘボピーにオヤブン、八百にユキ……キャラが動くってのはこういうことですよね。
やっぱりマンガはキャラクター。
悪人の顔もくどくて最高。ぱっと見て悪党って分かる。なんならヨダレたらして「グヘヘ」って言ってるからね。
骨格から変えて表現してあるからキャラの描き分けがうまい。最近のマンガのキャラ、男も女も見分けがつかない中性的な感じとは対照的だ。もちろん私はこのタッチが好みですね。各キャラクターはシルエットの違いも変化があって分かりやすいようにしてある。
機械モノのクオリティが高い
改造オートバイ、飛行機、武器、車……凄い。読者はこの正確な描写があるから絵に引っかからずに読めるんですよね。でもね、トレースとはいえ1ページ描いてみたら…大変すぎる!
いろんな構図で描き切るためにはメカの構造の理解や立体の把握する力などが求められる。バイクをあれだけ色んな角度から破綻なく見せるなんてそうそう出来るものじゃないです。興味があったり、好きだったりするだけじゃなくて、取材や資料の収集もかかせない、これがプロの仕事か。
俯瞰や空撮が多い
全巻通して読んだときに特に思ったのが、「俯瞰や空撮多いな」でした。
特に部屋のカットで、上から部屋全体を見せる構図が多い。そうすることによって人物の配置やモノの場所を読者が把握することができる。
もちろん高い技術があるからこそなんですよね。いや、それだけじゃないな。ラクしないでちゃんと絵で説明してる。
ド派手なアクションシーン
『ワイルド7』といったらド派手なアクションバトルですよね。団地の間を飛行機で銃撃戦、家の中をバイクが走り回るなんて普通のこと。
ビルとビルの橋渡しに鉄塔使って改造バイクで綱渡りのシーンなんか最高でした。
真似しようと思って真似できるかはわからないけど、確実に影響は受けたハズだ。
この無茶苦茶さはマンガの醍醐味。
記憶に残る数々の演出
演出のテクニックの幅も広かった。映画のようなスローモーションやカットバックもマンガ的に演出し直してある。
小道具を使った演出も憎い。心象風景も描いたり、読めば読むほど気づかされる。これは参考にしなければならない。
詳しくは望月三起也 ハードアクション&エロスの描き方 (玄光社MOOK プロのマンガテクニック)をどうぞ。
セリフも抜群にイカしてる
セリフもまたカッコいいんだな~。しかも背伸びしたセリフやモノローグが絵にかぶさってるんじゃんくて、ちゃんとキャラクターがその性格や状況にあわせた上でしびれるセリフを吐くんですよ。飛葉にしても、草波にしても、生きたキャラクターが魅力的にしゃべってるんだ。違和感なんて微塵もなく、ああこれがキャラクターが勝手に動き出すってことか。
望月先生は「ふき出しひとつで、1日中、手が止まることもしばしば」と語っている。それほど苦心して絞り出してる。やはりプロは違う……尊敬。
悪党がのさばってるあいだは死んでも生き返る!!
それがワイルド7よ!!
エピソードタイトルもカッコイイ
なんだかよくわからないけどタイトルもイケてる。「魔像の十字路」「地獄の神話」「野生の7人」…。
タイトルだけでイメージが膨らむ。不穏な感じもするタイトルもあり、雰囲気抜群。
制作メモ
今回も模写ではなくトレース。模写は時間がかかりすぎる。トレースでも十分に勉強になる、間違いない。
・枠線を引き、描き文字を一番上のレイヤーに足す。クリスタによる枠線の合成の方法を学び覚える。
・ペン入れ。飛葉以外をまず描く。悪人の顔も望月先生の魅力。最高です。
・飛葉を描く。ここでようやく気付く。毎回バイク描いてるの凄いな。好きじゃなきゃ描けないし、ディティールのこだわりも半端じゃない。敵のオリジナル改造メカもそう。脱帽した。立体の把握、メカの構造の理解、資料の読み込みも凄まじいレベルだと確信。
・効果線とカケアミ入れる。自分のカケアミの下手さにがっくり。前回のあすなひろし先生の時にも感じたが、こういったハッチングの基礎がなってないな自分は。左のベットの下の影のカケアミはカケアミブラシで塗ってみた。しょぼい。手で描こう。
・最後にトーン貼って完成したのが一番上の画像です。終わり。
3時間くらいかな。なぞってるだけで勉強になるんだから最高ですよ。
制作環境
・PCのとなりにお手本のページ画像を配置して描いた。トレースなんですけどね。下のレイヤーの画面だけでなく横にもあるとなにかといい。このスタイルを1P模写の基本にしよう。
悪党に生きる資格はねえ
『ワイルド7』関連リンク
まずは今回のお手本でもある『ワイルド7』。とにかくカッコいい。
続編はまだ未読なんです。近いうちに読むぞ。
さらに続編。これで終わりなのかな?
望月先生のテクニック本はこちら。おすすめのマンガ技法書でも紹介したけど、詳細にテクニックを解説してある。構図や仕草、小道具に至るまで一つのコマ、ページに込められた意図をわかりやすく説明してくれてます。
どうやら『ワイルド7』の生原稿ヴァージョンなるものがあるみたいだ。本屋でも実物を見たことがないからわからないが、版型も大きく生原稿を再現しているみたいです。
漫画家の生原稿は、印刷されたものとは全然違いますからね!小林まこと先生の生原稿を見に新潟へ行って感動したし、大友先生の『AKIRA』の原画展も凄まじかった。おそらくこの本も素晴らしい勢いで迫ってくることだろう。
ちょうど今回の「1P模写」で取り上げた「地獄の神話」シリーズだ。やはり傑作シリーズ、間違いない。値段高いけど買おうかな。シリーズごとに発行してるみたいですね。
その他の作品
まだまだたくさん描かれています。やはり巨匠は量がともなってこそですね。
Amazon著者ページ>>>望月 三起也
望月三起也先生の関連リンク
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