生賴範義ってどんな人
生賴範義。読めますか?「おうらいのりよし」です。けっこうな人が生瀬?とか読んだことあるはず。自分も若いときそうだった。
読みづらい名字のせいで抜群の実績のわりにイマイチ知名度がないっていう話があるぐらいですからね。
まずは今回の展覧会の紹介文はこちら
スター・ウォーズやゴジラのポスターで知られる、世界的イラストレータ-
生賴範義(おおらいのりよし)(1935−2015)の全貌を多数のイラスト作品や油彩画により紹介します。ー上野の森美術館 「生賴範義展 THE ILLUSTRATOR」概要より
誰もが一度は目にしたことがあるだろうポスターや本のカバー、ゲームのパッケージイラストを大量にてがけたイラストレーターです。
コーエーの「三国志」と「信長の野望」のイラストを子供心に「うまいなぁ。かっこいいなぁ」って思った記憶あり。
でもその頃はイラストレーターの名前に注意を払ってなかったし、多分「生賴範義」って署名してあっても読めなかったな。
今回の展覧会はSNSなどで評判も高く、耳にしたので行ってみた。生賴範義さんのことを少しの作品しか知らなかったし特に調べないで行ったんですけど、完全にやられた。
凄いなんてもんじゃなかった。
いざ展覧会へ!!
まずは大きなパネルがお出迎え。早速横が切れちゃってる。もう早く見たくてさ!
のんさんが担当した音声ガイド(550円)を装着してスタート!!
まずは直線の両脇に書籍の新聞広告の挿絵。点描。コレ、点の大きさも密度も変えてある。
新聞の印刷と点描は相性がいい。それにしてもうますぎる。写真でみても凄い迫力でしょ?
この新聞広告点描シリーズを抜けて右折すると生賴範義さんがいままで手掛けたカバーイラストの書籍が並べられた通称「生賴タワー」が姿をあらわした。
この「生賴タワー」周辺でボクのキャパ超えましたね。驚愕した。いきなりクライマックス。
これが「生頼タワー」だ!
なんだこの物量は⁉信じられない。
さらに信じられないのは「生頼タワー」に展示してあるのは一部でこの数倍手掛けているらしい…
ひとつひとつがまたすんばらしいんですよ。クラクラしてきた。
さらに、書籍のカバーイラストの「生頼タワー」の周りの壁面に大量に並べられてるのは氏がてがけた映画やゲームのポスターの数々。
「スターウォーズ」「グーニーズ」「ゴジラ」「ガンダム」「三国志」「信長の野望」…。どこかで一度みたことある作品です。
既にヘトヘトなワタシはもう写真撮る元気がなくなってました。 物量と作品のエネルギーのやられたのかもしれない。
商業イラストレーターの矜持というか、決意というか姿勢というか…。とにかくすごい迫力なんですよ。
最初の点描コーナーを抜け右折して「生頼タワー」の手前の壁に、氏のことばが飾られている。まずこの「ことば」を読んで後ろを振り返ると「生頼タワー」がそびえたっている。
この構成にはやられた。正直このコーナーだけで胸いっぱい、こみあげてくるものがあった。
生活者としての絵描きは 肉体労働者にほかならぬ。
生頼範義(おおらい のりよし)
ワタシ
まだまだある素晴らしい作品たち
ヘロヘロになりながら「生頼タワー」を抜けても、傑作の洪水が押し寄せてくる。
- スポーツ選手のポートレート
- 現代指導者の肖像画(ケネディなど)
- クラシックの有名人のポートレート
- 小説のシリーズモノ
- 映画のコンセプトアート
- 戦艦シリーズ
- タバコの広告
- SFマガジンの美女カバーシリーズ
挙げたらきりがないのでここまでにするが、それにしても描くジャンルの幅が広すぎる。描けないものが無いんじゃないかってレベル。
完成の絵より下描きのほうが大きいのもけっこうあった。多分ポイントを確認してるんだろう。
そしてもっとゴリゴリ厚塗りかと思ったら、薄い。つまり少ない手数であの密度を出してるということ。凄すぎる。
あの仕事量をこなすには相当な技術の裏打ちがある。当たり前か。
タバコの広告の絵は凄すぎて意味不明。手描きで描くことを考えただけで半泣き。
生賴先生制作作品の謎
制作に関して諸説ある作品がございます。
作品はHOPE。普通はレンガを書いて次に金網を上から被せるという描き方なのですが、金網を描いた後にレンガを描かないと、こんな風には仕上がらないとの話も…。でも先生亡き今、真実は分かりません。
#ohrai pic.twitter.com/nYsGhk8SAt— 生賴範義 展 (@Noriyoshi_Ohrai) 2018年1月23日
↑生頼「こういうのもたまには気晴らしにいい」
最後に目玉として個人の作品、油彩画の大作が待っていた。
大きくて全体をおさめられなかった。まぁ凄い迫力だった。他にもベトナム戦争を題材にしたもの、イラン革命などの作品もあった。
戦争を経験し、空襲を受け目の前でひとが死んでいくのを目の当たりにした生頼さんのメッセージが込められている。
戦争に巻き込まれた人間を「死ぬ」とあらわさず「破壊される」と表現したことのように、戦争というのは「人」としてよりも「モノ」として扱われ壊されてしまうということなのだ。と音声ガイドで解説されていた。
SFマガジンの美女シリーズ鑑賞してるとき隣の人がずっと「ポロリは基本…ポロリは基本…」ってはだけた胸を舐めるように見ながら言ってた。10回以上。
多分、見るポイントはそこではない。
生賴範義と小磯良平
19歳で入学した芸大の油絵学科、指導教官は小磯良平だったらしい。
小磯良平はもちろん有名画家ですけど、先生としても芸大の小磯ゼミはレベルが高かったという話を聞いたことがある。
僕が文化服装学院のオープンカレッジでクロッキーの授業を受けていた時に講師が教えてくれた。静物デッサンの時、よく表情つけるために布を敷いたりするんですけど、その布の柄を小磯良平は見たまま一発そのまま描いてたと。 もう観察眼と出力する手がばっちりリンクしてるんでしょう。凄いなぁ。小磯良平デッサン
音声ガイドによると、生賴さんは芸大を三年で退学。
「もう大学で学ぶことは何もなくなったから」
…マジか。そこからずっと独学で西洋絵画の巨匠たちの模写などをして研鑽を重ねた。情熱ですよね。普通の人はここまで集中力が持たない。遊んだり休んだり…学び続けることがどれだけ難しいことか。
東京から宮崎にアトリエを移したのも、仕事の打ち合わせや付き合いなどの無駄な時間を減らすためとのこと。
ストイックにひたすら絵にむかいたかったんだろう。……すごいなぁ。
生賴範義展まとめ
とにかく膨大な作品群に圧倒され、そして疲れた。
展覧会後、電車で画集読んで、帰宅後ほんとに疲れが出て寝込んだ。一回じゃ脳のキャパ超えて後半朦朧です。複数回行くのがおすすめ。
リアル系のイラストレーターの人はどう思うんだろう?打ちのめされると思うな…
はっきりいって異常でした。あのクオリティをあの量……
ひとりの人間の仕事量とはとても思えなかった。
40年間ほぼどこにも出かけずひたすらアトリエで絵を描き続ける。渡された資料や小さい写真をてがかりに絵を組み立てられるテクニック。
いや、テクニックよりもなにより集中力と持続力ですよね。40年…。
バルザック、葛飾北斎、リー・ペリー、サン・ラー、手塚治虫、大竹伸朗……
個人的に好きな作家、アーティストは質もさることながら量が膨大。
モチベーションがどうだとか、ノルマどうこうだとか、そんな低レベルの話じゃない。
創ることへの根源的な欲求、湧き上がる情念、突き動かす使命を感じる。
なんて言ってるうちはまだまだ甘いんだろうな。
意識しないで、結果こんだけ「出来ちゃった」くらいじゃないとね。
ワタシ
ワタシ
権利関係横断して、「生賴範義全集・全仕事」という作品集出してください!
関連リンク
参考
HOME of 生頼範義NORIYOSHI OHRAI :THE ILLUSTRATOR
↑Amazonの生賴範義サーチ。 すぐ絶版プレミアム価格になるから欲しい人は早めに。
↑いろいろな人のレポがまとめられている。
↑前回の宮崎で開催されたはじめての大規模な生賴展の経緯から今回の展覧会の開催に至るまでの経緯。すごい労力だ…
画集・作品集
生賴範義の入門ならまずはコレ。てがけた大量の商業作品を見ることができる。量に圧倒される。著名イラストレーターによる生頼さんをテーマにした対談や鼎談も読みごたえあり。
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